にいちゃん

小さな子供(ゆい)にレイプしようとする展開は若干抵抗がある。
あくまで未遂なのだが。辛い、きつい。
漫画の時は苦手なシーンはパラパラっと読めたんだけど、ドラマCDになると音として耳に入る分精神的にダメージがある。
だけどそこを抜けてしまえば二人の男の愛と葛藤の物語が待っている。

この作品は痛い。
肉体的にも精神的にも痛い気分になる。
景からのサディスティックなセックスを受け入れて好きだ好きだというゆいの気持ちとは裏腹に、景はゆいのことよりその行為に執着しているように見える。
クズな攻めとそれを受け入れるちょっと不憫な受け、という構図。
男女ものであったら絶対に受け入れられないストーリー(ロリコンとかリベポルとか)でもBLだとファンタジーとして消化できる。
BLとは懐の広い、奥深いジャンルだと思う。

攻めの加藤さんはBLメイン初作品だったらしい。
乙女の方では色々とされている方なので、メイン初めてといっても聞きごたえたっぷり。
エロはもちろん景の葛藤、親との確執といった重いシーンの演技力が素晴らしかった。

景をこの道に引きずり込んだ恩師が新しい普通の家庭を持っていたと景が知ったとき。
あれは景のアイデンティティを揺るがす大きな出来事になった。
唐突に投げられたボールを受け取ったはいいが、誰に渡したらいいかわからず戸惑ってしまうかのような気持ちだろうか。
景が自分がこの先どうすればいいのかを考えたときに思い浮かんだのが恩師で、その彼が『まとも』になっている。
狂った自分は孤独なまま、どこへ向かえばいいのか。その時の景の不安な気持ちを思うと、私はひどく悲しくなる。
一緒になって狂ってくれる相手もまた、自分がこの道に引きずりこんだ少年・ゆいしかいない。
それゆえ、ゆいは景の罪悪感・劣等感を増幅させてしまう存在だ。
一緒にいれば否が応でも自分の異常さ、惨めさが浮き彫りになる。
でも孤独感に耐えきれず、結局ゆいを求めてしまう。
景にとってゆいはファム・ファタールであるが、ゆいにとってものまた、景はファム・ファタールである。
お前は異常だと罵倒されるのも一緒に堕ちていきましょうと言われるのもどちらも景にとっての慰めにはならないのかも知れない。

ゆいは景を愛しているし、(自分たちを理解しない)周りなど切り捨てればよいと口ではいうが完全に割り切ることもできずに世間体を気にして普通を装っている。
この物語の中で現状を打開できた人間が舞子くらしかいない。彼女は彼女でまた、葛藤を抱えながらではあるだろうが人生を歩んでいる。

景もゆいも恋人同士として人生のコマを進めてはいる。
だが現状は打開できていない。ずっと泥沼の中で葛藤しもがき苦しんでる。
景は変わらず世間や親に怯えているし、ゆいも同様に自分を偽り生活している。
正直このぐずぐずな生活はお互いを殺し合うだけの関係なのでさっさと清算でもなんでもしたらいいのにと思う(←おい)。
まぁ、できんでしょうね。。
ふたりのその後を描いた「ゆい」に関してこれはなくてもいいんではないかと漫画を読んだ時から思っていた。ラストがあまりに辛すぎるので。
でもこれが作者の提示した2人の姿なのだ。受け入れよう。
正直景はもう少ししっかりして欲しいよ。年上なんだし。
2人の未来はあまり幸せそうでないのは後味が悪いが、重いBLが好みなので大満足だった。
このまま依存しあって堕ちるとこまで堕ちていくのも美学★ なんつってね。

俺は病気じゃないです
普通ってなんですか?
なれるもんならなりたいです
だけど俺にはわかりません

このセリフを加藤さんで聴けたことがうれしい。
一番好きなシーン。。加藤さんが景でよかった~!!
ゆい、と最初声が聴こえたときの高揚感も凄い。幸せ。